
東京, 2026年8月18日 - (JCN Newswire) - アジア太平洋地域(APAC)の産業界で人工知能(AI)の活用が進む中、特に活発に攻撃活動を展開している高度な持続的脅威(APT)グループの「SilverFox」が、その動向に付け込んだ攻撃を仕掛けています。このたび、Kasperskyのグローバル調査分析チーム(GReAT)のリサーチャーが、その実態について解説しました。同リサーチャーはまた、急速に進化するAI機能により、サイバー攻撃が「専門チームによる組織的な攻撃」から「低コストで実行できる個人による攻撃」へと変化する時代が到来しつつあると警鐘を鳴らしています。
SilverFoxは、2025年12月にKasperskyのグローバル調査分析チーム(GReAT)のリサーチャーらによって確認された脅威アクターで、ペイロードを複数の段階に分けて配信する手法を採用していることで知られています。また、攻撃の各段階で異なるアドレスやドメインを使用する分散型インフラを活用しており、これらの手法は検知されるリスクを最小限に抑え、攻撃チェーン全体がブロックされるのを回避することを目的としています。
同グループが最近実施した攻撃キャンペーンでは、インド、インドネシア、南アフリカ、ロシアの産業、コンサルティング、貿易、運輸業界の企業が標的とされており、手口としては、税務当局による税務調査の通知を装ったフィッシングメールや、「税務上の違反項目一覧」が格納されているとするアーカイブファイルをダウンロードさせようとするメールなどが使用されていました。税務当局からの連絡であるかのような権威性や緊急性を悪用することで、被害者にファイルをダウンロードさせ、攻撃チェーンを作動させることを狙ったもので、Kasperskyの調査では、2026年1月から2月にかけて1,600件を超える悪意のあるメールが確認されています。
そして今回、GReATの最新調査により、SilverFoxが偽のClaudeアプリを使用して標的の組織へと侵入を試みていることが判明しました。Claudeとは、Anthropic社が開発した大規模言語モデル(LLM)で、高度な対話型アシスタントおよびチャットボットです。自然な対話を通じて、文章作成やプログラミング、長文ドキュメントの分析、複雑な問題の解決などをサポートします。
Kaspersky GReATのリードセキュリティリサーチャーであるイェ・ジン(Ye Jin、通称:セス<Seth>)は、次のようにコメントしています。「SilverFoxはAPAC地域全体で特に活発に活動している脅威グループの1つです。標的への侵入経路は、偽サイト、フィッシングメール、そしてソーシャルメッセージングアプリで配布される有害なファイルという3つのシンプルなもので、侵入後はマルウェアを注入して、長期的なサイバースパイ活動を行ったり、機密情報を収集したりします。今回の分析では、企業でAIを活用する動きが拡大していることに付け込んで、Windows、macOS、Linuxの各OS向けの偽のClaudeアプリを配布して標的のセキュリティ防御を突破しようとしていることが確認されました」
攻撃の分布状況を見ると、APAC地域がSilverFoxの攻撃活動による影響を最も大きく受けており、その件数はその他すべての地域を合計した数を大きく上回っています。このことから、現在、SilverFoxの脅威は主にアジア地域、特に東アジアと東南アジアに集中していることが分かります。
「現在の脅威データによると、中華圏がSilverFoxのメインターゲットとなっており、全攻撃の90 %以上が同地域に集中しています。中国本土だけで全体の71 %を占めているほか、ミャンマー、カンボジア、シンガポールでも多くの攻撃が確認されており、今後注視すべきホットスポットとなっています」(イェ・ジン)
業種別では、製造業が全攻撃の3分の1以上を占めており、SilverFoxにとって最大の標的業界となっています。これにIT業界とサービス業界が続いており、GReATのリサーチャーもテクノロジー関連従事者を狙ったフィッシング攻撃を多数確認しています。また、SilverFoxは価値の高い標的を狙うことで知られており、医療業界や金融業界も大きなリスクに直面しています。
AIによる攻撃:スピード、秘匿性、攻撃のしやすさ
さらにイェ・ジンは、世界初の完全なLLM主導型ランサムウェアである「JADEPUFFER」についても解説しています。JADEPUFFERはサイバー脅威において重要なターニングポイントとなったランサムウェアで、それまでの攻撃ではAIは人間の攻撃者を補助する役割にとどまっていましたが、この事例ではAIが自ら意思決定を行い、攻撃を実行する存在として機能していることが明らかになりました。
JADEPUFFERは初のエージェント型ランサムウェアとして、AIの機能を活用したサイバー攻撃の速度と高度化のあり方を根本から変えました。従来の攻撃では人間のオペレーターが意思決定や戦術の調整を担っていましたが、この事例では、AIを活用した脅威が状況の分析、適応、攻撃の実行をリアルタイムで行えることが実証されました。
「Sysdigにより、この特定のケースでは、この悪意あるAIエージェントは、失敗した攻撃試行を診断し、手法を修正した上で新たな攻撃を開始するという一連のサイクルを、わずか31秒で完了したことが明らかになりました。これは、大半の防御担当者の対応能力を大きく上回るスピードです。さらにJADEPUFFERは、スピードだけでなく、これまでにないレベルの自律性も見せており、AIエージェントが攻撃プロセス全体を通じて独立した意思決定を行い、人間による直接的な監督がなくても、経験豊富な攻撃者の思考プロセスを再現できる段階に達していることを示しています」(イェ・ジン)
速度や自律性に加え、サイバー攻撃におけるエージェント型AIの活用拡大は、秘匿性や攻撃の実行のしやすさの面でもこれまでの常識を変えつつあります。
その例としてイェ・ジンが取り上げたのが、信頼できるAIによるWeb要約機能(ChatGPTなど)を悪用する間接的プロンプトインジェクション手法の「ChatGPhish」です。ChatGPhishは、Webページに悪意のある指示を隠しておき、ユーザーを誘導してAIアシスタントにそのページの内容を要約させる、という攻撃です。AIは、埋め込まれた悪意のある指示やリンクを知らず知らずのうちにユーザーへ伝えることとなり、意図しない形で攻撃に加担することになります。
この攻撃では、信頼されているAIインターフェイスを通して悪意あるコンテンツが表示されるため、安全なものだと思い込んだユーザーが有害なリンクをクリックしたり、危険な指示に従ったりする可能性が高くなります。また、こうした攻撃は、従来のサイバー攻撃と異なり、一見するとユーザーとAIサービスが正常にやりとりしているように見えるため、従来のセキュリティツールでは検知することが難しくなっています。
さらに、悪意のあるAIエージェントの登場により、高度な技術知識がなくてもサイバー攻撃を仕掛けることが可能になりました。このことが示されたのが、2026年1月に発見されたAIおよびクラウドネイティブ型マルウェアフレームワーク「VoidLink」の事例です。
従来のマルウェアが主に人間の開発者によって作成されていたのに対し、VoidLinkはほぼ全面的にAIの力を借りて開発されたと報告されており、生成AIによって高度なマルウェアの開発手法が劇的に変わり、そのハードルが大きく下がっていることがうかがえます。
AIネイティブな防御の必要性
AIによる攻撃には、AIによる防御で対抗しましょう。AIを利用したサイバー攻撃から企業や重要なネットワークを保護するにあたっては、防御側もAI機能を活用できると、Kasperskyのエキスパートは説明します。
AIによる高度な脅威に対応する上で企業が実施できる4つの対策を以下に紹介します。
1. プロアクティブ防御-攻撃を受けてから対応するのではなく、AIを活用した脅威ハンティング機能を使用して未知の脅威を事前に発見します
2. ゼロトラストアーキテクチャ-ゼロトラストアーキテクチャを導入し、アクセス要求を一つひとつ厳格に検証することで、「社内ネットワークだから安心」という信頼に起因するリスクを排除します
3. 体系的な防御-エンドポイント、ネットワーク、アプリケーション、データを包括的に保護する防御体制を構築します
4. AI対AI-大規模言語モデルやデュアルユースAI技術を使用して検知・対応能力を強化し、攻撃者の手法の変化にリアルタイムで適応します
「攻撃者がAIを活用して意思決定を自動化し、攻撃のあらゆる工程を加速できるのであれば、防御側も同等の知能で対抗しなければなりません。継続的に更新される脅威インテリジェンスによって強化されたサイバーセキュリティソリューションは、もはや競争優位性ではなく、急速に進化する脅威に先んじて対応するための必須要件となっています」(イェ・ジン)
Kasperskyについて
Kasperskyは1997年に設立されたサイバーセキュリティとデジタルプライバシーを専門とするグローバル企業です。「サイバーイミュニティ」というアプローチによって業界に革新をもたらし、これまでに10億台以上のデバイスを保護し、個人、企業、重要インフラ、政府機関をサイバー脅威から守っています。
Kasperskyは「Cybersecurity True to Business」(ビジネスに寄り添うサイバーセキュリティ)を掲げ、明確な成果の提供、収益の保護、業務負荷の軽減、ダウンタイムの防止に注力しています。また、高度な脅威インテリジェンスとセキュリティの専門知識を活かし、中小企業から大企業まであらゆる規模の組織を対象に、実績あるAI駆動型保護技術とシンプルな管理機能、専門的なサポートを組み合わせた革新的なソリューションとサービスを継続的に提供しています。
第三者機関によるテストでも高い評価を受け、何百万人という世界中のユーザーと約20万の組織から信頼されているKasperskyは、脅威の早期検知と迅速な対応を可能にし、より高い信頼性と自由度をもって運用できる環境を提供することで、お客様にとって最も重要なものを守ります。詳細については、www.kaspersky.com をご覧ください。
グローバル調査分析チーム(GReAT)について
2008年に設立されたグローバル調査分析チーム(GReAT)は、Kasperskyの中核をなす業務を担っており、世界各地のAPTやサイバースパイ活動、大規模マルウェア、ランサムウェア、サイバー犯罪者のアンダーグラウンド活動動向を明らかにする活動に取り組んでいます。現在、GReATには世界全体で35人以上のエキスパートが在籍し、欧州、ロシア、ラテンアメリカ、アジア、中東を拠点として活動しています。優秀なセキュリティ専門スタッフがアンチマルウェア研究とイノベーションにおいて当社のリーダーシップを発揮し、比類のない専門知識、情熱、好奇心をもってサイバー脅威の発見と分析に取り組んでいます。
メディア連絡先:
Hao Yung
Chungchung.haoyung@kaspersky.com
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